門松になるまえの、弱門松のもの
年明けの雑煮のために一束298円よりは気の利いた値段の小松菜と、2個248円よりは気の利いた値段のゆずを探して夏に引っ越した新居のまわりの食料品店をはしごしていた時、通りかかった、明かりの消えたオフィスビルの、玄関に、竹の先端部が真っ平の門松が2つ鎮座ましましていた。
私は次の小松菜に向かいながらふむこれはきっと門松になるまえの、弱門松であろう。年が明けたら上部を斜めにスパーン!と切るのである。年が明ける前はこのように地味な状態で準備して、年が明けたらスパーン!とするのが本来の手順なのであろう。しかし通勤路にあるオフィスビルにはクリスマス前から既に上部スパーン!な門松が鎮座ましましていたな。そうだ随分気が早いなと思ったんだった。年を越す前からあのような切り口を晒すなんて破廉恥極まりない。いやしかし年の瀬。業者も忙しく、本来の手順と言えど簡略化され廃れるのも仕方ないよのう。と考え一束150円の小松菜と、1つ100円のゆずを見つけ満足して帰った。
帰ってインターネットで検索したら門松の竹の先端部の形状は斜めに切った「そぎ」と真横に切った「寸胴」の2種類があるとあり、うぐぐと唸りながら蹲った。
気がつけば推敲したはいいけれど私の夢の中に登場した際の奇行が現実界のその人の名誉に触れるのではないかと思いアップしていない文章や、ただ寝起きにメモしただけの日本語になっていないようなものが丸3年分溜まっていて、どうしよう。
西日が差し込む15時の科博のラウンジ
「ここ」
「ここ?」
「ここ、シロナガスクジラ撮る人達が一番良く見える席」
「みんな撮るね」
「地方から修学旅行とか社会科見学で来た中学生はみんな撮る」
「あの子ダイオウイカの帽子かぶってる」
「夏休み中は塗り替えしてて、足場で見えなかった」
「先月も来たの?」
「うん」
「そう」
「学校みたいで眠くなるね」
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ばらばらになっていた日記のログを統合して移行したり整理したりしました。
ねこかわいい
少し涼しくなってきて、猫が私のベッドで一緒に眠るようになった。
彼女は肌触りのよい古いタオルケットが好きで、上に乗ってはよくふみふみちゅーちゅーする。肌触りのよい古いタオルケットは義父のおさがりで、糸がそこらじゅうほつれているのだけど本当に肌触りが良いので私も気に入っていたのだが、別のタオルケットより明らかに猫がふみふみする頻度が高いので、私はその肌触りのよい古いタオルケットを彼女に譲ることにした。
うちの寝室は二階にある。深夜そろそろ眠ろうと階段を上がると一番上の踊り場に猫が寝ていて、ふむふむ今日はそこが涼しいのですかと声をかけて寝室に入ると猫もするりと入ってくる。猫が一階にいるときは、階段に足をかけるが早いかその脇をダッシュですり抜けて踊り場でドヤ顔をしてから先に寝室に滑りこむ。ドヤ顔をしないで寝室に滑りこむことも多いかもしれない。
どうやら一緒に寝るために待っていてくれたりしているらしいとしばらくしてから気がついた。夫にはこういうことをしないので優越感を感じる。
ベッドであまり肌触りの良くないタオルケットにくるまりながら、少し手を伸ばしてふわふわの毛を指で撫でると、静かに喉を鳴らし始めるのがわかる。
今月で、猫は2歳、私は27歳になった。
ビリジアンと赤の傘
予定通り、無事勤め先で次の催し物をはじめることができた。壁に青い絵を飾り、絵に囲まれた中央の空間を更にビニールシートでテントのように覆って、私はその中でこたつに入りテレビを見ながらラップトップのキーボードを叩いていた。
思いがけず結構お客が入る。テントの入り口をぺらとめくり客が顔を出すたび、挨拶し、来てくれて嬉しいと声をかける。
海さんが顔を出したので私は嬉しくなって、隣に小さな遊園地が出来たんですよと誘った。今日は用事があるから明日また来る、一緒に行こうと彼女は絵も見ずに早々に帰ってしまう。残念に思うが明日もまた来てくれるらしいのでまあいいか。
祥子おばさんも来ていて、みんなあんたと話をしに来るみたいねと嬉しそうに言う。海さんはビリジアンと赤の布を半分ずつ使った大きな傘を忘れていく。
隣の遊園地はとても小さい。ミニコースターとミニ観覧車が目玉なので、明日海さんをどちらに誘うべきかこたつの中で一晩悩む。多分観覧車が良いだろう。彼女は観覧車が好きで彼女の恋人とよく乗っているらしいから。